コンテンツの優先順位は、一度決めれば終わりではありません。
今月は何を作るのか。来月は何を見直すのか。営業から戻ってきた情報を、次の制作にどう反映するのか。
これまでの記事では、資料が足りないと決めつける前に相手側で何が起きているかを確認すること、必要なものが複数あるなら次に作るものを選ぶこと、渡した資料が相手の社内で使える形になっているかを見ること、費用対効果について自社で言えることと言えないことを分けることを書いてきました。
では、ここまで一度整理できたとして、次の月も同じように判断できるでしょうか。
私は、外部支援を使う場合でも、判断そのものをすべて外に置き続ける状態にはしないほうがいいと考えています。顧客の変化や、社内で何を優先するかは、外部の支援者より社内の人のほうが先に知るからです。
最初の設計を外部と一緒に作ったとしても、何を見て、何を比べて、誰が決めるかは社内に残す。
この記事では、「内製か外注か」を決めるのではなく、この判断を自社で繰り返せる状態になっているかを考えます。
「来月からも、二人だけで回せる?」
業務システムを提供するA社では、営業の田中さんとマーケティング担当の佐藤さんが、顧客との商談を見ながらコンテンツの優先順位を整理してきました。
顧客側で何が止まっているのかを確認し、制作候補を並べ、何を先に作るかを決める。渡した資料が相手の社内で使える形になっているかも見直しました。費用対効果を聞かれたときには、自社で出せる数字と、相手に確認しなければ置けない数字を分けました。
ある月の振り返りで、A社の経営者が二人に聞きます。
「ここまで整理できたとして、来月からも二人だけで回せる?」
佐藤さんと田中さんは、一度考えてみます。
顧客に確認することはできます。営業で聞いた話を持ち帰ることもできます。制作候補を出すこともできます。
ただ、月末になると、佐藤さんは施策の実行で予定が埋まります。田中さんも商談や提案が続きます。「今月は何を優先するか」を整理する時間は、空いたところで取っています。
経営者と優先順位を確認する場も、毎月決まっているわけではありません。さらに、前回なぜそのコンテンツを優先したのかは、佐藤さんと田中さんの頭の中にはありますが、他の人が読める形では残っていません。
一度はできた。でも、来月も同じようにできるかは別の話でした。
自社で進められるかを見る5つの条件
私は、自社で進められるかを見るとき、「詳しい担当者がいるか」だけでは見ません。
見るのは、次回も同じ問いを使って判断できる状態かです。
確認したいのは、次の5つです。
1. 確認できる
顧客や営業から、何が起きているのかを確認できる人がいるか。
制作側だけで想像して決めるのではなく、商談や顧客接点で起きていることが戻ってくる状態かを見ます。
2. 比較できる
作りたいものが複数出たとき、候補を並べて比べる時間があるか。
「全部必要そうだから、できるものから作る」ではなく、どれを今やるかを考える時間が確保されているかです。
3. 合意できる
経営者や責任者と、何に時間を使うかを決める場があるか。
担当者が一人で優先順位を背負うのではなく、「今月はこれを先にする」と確認できる場があるかを見ます。
4. 実行できる
決めたあと、相手が使える状態まで進められるか。
企画を決めただけで止まらず、営業が渡せる、顧客が使えるところまで持っていけるかです。
5. 次回も再現できる
前回なぜそう決めたのかが、担当者の頭の中だけに残っていないか。
「今回はこれを優先した」という記憶だけではなく、「この条件なら、こちらを先にする」という判断の仕方が共有されているかを見ます。
一度うまく整理できても、この5つのどこかが毎回欠けると、判断はまた担当者個人に戻りやすくなります。
全部あるなら、自社で進めればいい
A社も、この5つで自分たちを見直しました。
顧客への確認はできます。制作も進められます。
ただ、比較する時間が安定して取れていません。経営者と優先順位を決める場も定例化されていません。判断の記録も、まだ二人の頭の中にあります。
ここで考えたいのは、「外部に頼んだほうがいいか」ではありません。
自社で回すために、何が足りていないのか。
です。
もし5つが全部あるなら、自社で進めればいい。
一部だけ足りないなら、その部分だけを分けて考えます。
時間だけ足りないなら、整理の作業を誰かと分担する方法があります。判断軸がまだ決まっていないなら、最初の進め方だけ外部と一緒に作る選択肢があります。
顧客への確認は社内で行い、戻ってきた情報の整理だけを外部と分担することもできます。優先順位は社内と外部で一緒に考え、制作そのものは社内で進める形もあります。
一方で、経営者と優先順位を決める場そのものがないなら、それは外部に委託しても解決しません。
その場を作るのは、社内の仕事です。
外部支援で減らせる仕事と、渡せない判断
外部支援が役立つ場面はあります。
たとえば、社内で曖昧になっている論点を一度並べる。複数部署から出ている情報を整理する。最初の判断軸や進め方を作る。通常業務の中では取りにくい整理の作業を分担する。社内で当たり前になっている前提を、一度別の視点から問い直す。
こうしたことは、外部と分担しやすい仕事です。
ただし、外部支援で減らせる仕事はあっても、外部支援に渡せない判断もあります。
顧客が実際に何と言ったのか。営業現場で何が止まっているのか。今、会社としてどこに時間を使うのか。決めたものを、その後も社内で使い続けるのか。
これらは、外部の支援者だけでは決められません。
私がこれまで経験した範囲でも、判断を継続しやすかった状態には共通するものがありました。担当者に考える時間があり、営業から情報が戻り、経営者と優先順位を確認する場がある。
一方で、担当者個人の判断に戻りやすかった状態では、毎回「次は何を作るか」がその場で決まり、営業で得た情報が制作計画まで戻らないことがありました。
違いは、外部を使っていたかどうかだけではありませんでした。
誰が判断を持ち、その判断を繰り返せる状態にしていたか。
そこに違いがありました。
経営者が決めるのは、外注費を払うかだけではない
A社では、経営者が佐藤さんと田中さんに三つ確認しました。
誰が、毎月の優先順位を判断するのか。
その人に、判断する時間を渡せるのか。
外部を使う場合、何を任せ、何を社内に残すのか。
佐藤さんに判断を持ってもらうなら、施策実行で予定が埋まったままでは続きません。判断の時間を業務として確保する必要があります。
田中さんから顧客の情報を戻すなら、それを共有する場も必要です。前回の判断を次回に使うなら、理由を記録する必要があります。
外部を使うかどうかは、そのあとです。
また、これは外部支援を早くやめるべきだという意味でもありません。
A社に足りなかったのは、判断できる人ではありませんでした。判断する時間と、判断を共有する仕組みでした。
経営者が決めたのは、「外注するか」ではなく、誰がこの判断を持ち、その人が判断できる状態をどう作るか。
そして、外部を使うなら、足りない部分だけをどう補うかでした。
この判断を、来月も繰り返せるか
先ほどの5つの条件で、自社の状態を見てください。
足りないものがあるなら、その一つをまず特定します。外部を使うかどうかは、そのあとで十分です。
5本で見てきたこと
この5本で見てきたことを並べると、やっていることは複雑ではありません。
何が起きているかを確認する。
次に作るものを選ぶ。
相手が使える形にする。
自社で言えることと言えないことを分ける。
そして、その判断を誰が持つかを決める。
この一連を社内で回せるなら、外部支援を使う必要はありません。
どこか一つが毎回止まるなら、全部を外に任せるのではなく、その部分だけ外から補う選択肢があります。
最後に考えたいのは、この問いです。
この判断を来月も自社で繰り返せるか。難しいなら、どの部分を外から補い、どの判断を社内に残すか。
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