プロレクト代表の武田です。
第2弾「止血編」で、自社オウンドメディア「BtoBマーケティング教科書」の 38 記事を、一気に noindex にした話を書きました。用語辞典 33 本と、AI Overviews に飲まれた 5 本です。
あの記事の最後で、私はこう書きました。「残された記事の順位回復やカニバリ解消、インデックス除外の完了、外した記事の元読者の行方は、1〜2か月時点・3か月時点のデータと合わせて検証する」と。
この記事は、その答え合わせです。言えたこと、言えなかったこと、そもそも測れなかったこと を、順番に分けて書きます。
そしてもうひとつ。noindex とは別に、このサイトの検索流入は、その後もずっと下がり続けました。「移行で何か壊したのではないか」という疑いも含めて、落ち方を一度きちんと診断しました。その結果も、後半に載せます。結論を先に言うと、移行については、確認した 80 URL で正常応答と canonical の欠落がないことを確認しました。noindex については、サイト全体の推移だけでは影響を切り分けられていません。表示回数の減少は、noindex より前から始まっていたことを確認しています。
まず、データの範囲を区切る
第2弾でも書いたとおり、観測期間を曖昧にしたまま数字を並べると、読む人を誤読させます。先に範囲を固定します。
- noindex 適用日:2026-05-08
- 本記事のデータ:Search Console(Google 検索、URL プレフィックス プロパティ)を 2026-09-06 に API で取り直したもの。2026-09-04 まで、つまり 適用後 120 日ぶん
- 比較の単位:適用日を起点にした 30 日窓(適用前 30 日 / 1〜30 日目 / 31〜60 日目 / 61〜90 日目 / 91〜120 日目)
ひとつ注記があります。今回のデータは取り直しなので、第2弾で使った当時のエクスポートとは数%のズレがあります。たとえば用語辞典 33 本の「直近 3か月」のクリックは、第2弾では 162、今回の取り直しでは 158 です。Search Console のデータは後から補正されるため、この程度のズレは起きます。本記事の数字は、すべて今回の取り直し側で統一します。第2弾との突き合わせで数字が合わない箇所は、この理由です。
答え合わせ①:38 記事は、検索結果から消えたか
第2弾で「早くて数日、長くて数週間」と書いた、インデックス除外の完了。実際はこうでした。
適用後 60 日を過ぎてからは、クリックも表示も 完全にゼロ です。最後に表示が記録されたのは 2026-07-01、適用から 55 日目でした。
除外の進み方を週単位で見ると、もう少し立体的に分かります。「その週に 1 回でも検索結果に表示された記事の本数」です。
適用後 3 週間はほぼ全数が表示され続け、5〜6 週目で一気に減り、8 週目に最後の 1 本、9 週目でゼロ。「一気に外す」が「一気に消える」にはならない、と第2弾で書きましたが、消えるまでに 約 8 週間 かかりました。「長くて数週間」という見立ては、甘かったと言うべきです。
群別の動きも、第2弾で観測した順序どおりでした。
C 群 5 本は 31 日目以降でクリックゼロ。用語辞典 33 本は 1〜30 日目までクリックがほぼ維持され(46 → 41)、31〜60 日目で崩れました。用語辞典は「サイト全体の塊」として Google が長く扱ってきた分、再クロールの完了が遅い、という第2弾の読みは、そのまま結果に出ています。
第2弾で個別に書いた主役 3 本も、同じ道をたどりました。
ここまでが、言えたこと です。38 記事は意図どおり、約 8 週間で検索結果から完全に消えました。
答え合わせ②:サイト全体は、壊れたか
第2弾で「いちばん怖かった部分」と書いた、サイト全体への影響。まず 38 記事が担っていた比率を、適用前 30 日で取り直しました。
第2弾では適用後 6 日で「4% 程度」と書きました。適用前 30 日で取り直すと 5.1%。いずれにせよ、サイト全体の 5% 前後 です。
そのうえで、サイト全体の Google クリック(1 日平均)を月ごとに並べます。
サイト全体の1日平均クリック数は、4 月の 44.0 から 8 月の 27.3 へ約 38% 減少しました。この減少幅は、外した 38 記事が占めていた割合(5.1%)を大きく上回ります。ただし、この推移だけでは、38 記事を検索対象から外した影響と、その他の要因を切り分けられません。
ただし、正直に書きます。「外して、良くなった」は、言えません。8 月の 27.3 クリック/日は、noindex 前の 4 月(44.0)よりも、適用直後の 5 月(32.4)よりも低い。38 記事を外した後も、サイト全体の下落は止まっていません。
ここから言えるのは、noindex を外した後も、流入は戻らなかった ということです。原因のほうは、この推移だけでは判断できません。捨てる判断は、サイトの主張を絞るためのものであって、流入を戻すためのものではない。第2弾でもそう書いたつもりですが、数字で見ると改めてはっきりします。
答え合わせ③:測れなかったこと
第2弾で「1〜2か月時点で検証する」と書いた項目のうち、測れなかったもの を隠さずに書きます。
残した記事の順位回復・カニバリ解消。これは、検証できませんでした。理由は 2 つあります。ひとつは、38 記事とカニバリを起こしていた「本命記事」を、事前に特定して固定していなかったこと。後から「どの記事が競合していたか」を決めると、都合のよい記事を選ぶ余地が生まれるので、やりません。もうひとつは、後半の診断で分かったことですが、このサイトの主要記事は 順位が改善しているのに表示が激減している という状態で、順位を指標にしても効果を語れなかったことです。
外した記事の元読者の行方。用語辞典に来ていた人が他の記事に回遊したのか、離れたのか。これも、検索データだけでは分からず、今回は照合していません。
用語辞典の統合。第1弾で「用語集の親ページを立てて統合する」と書きました。実際に公開できたのは、受注導線の用語約 60 語を検討プロセス順に並べ直した用語集 1 本(2026-05-25 公開)だけです。
統合は完了していませんし、公開した 1 本も、まだ検索ではほとんど読まれていません。用語辞典 33 本が 3か月で 158 クリックを集めていたことと比べれば、「統合で流入を引き継ぐ」は現時点では起きていない と書くのが正確です。ただ、この用語集は検索で読ませるためというより、サイト内で検討プロセスの案内役をさせるために作ったものなので、検索の数字だけで判定はしません。判定は、次に足す記事群と一緒に見ます。
ここまでが「言えなかったこと」です。無い数字は、無いと書きます。
診断:流入は、どこから落ちていたのか
ここからは、noindex とは別の話です。
第1弾で「63% 落ちた」と書いたこのサイトの検索流入は、その後も下がり続けました。第5弾の基盤移行(2026-07-04)のあとも止まらず、「移行で何か壊したのではないか」という疑いが、私の中にずっとありました。
そこで 2026-09-06 に、Search Console 16か月ぶん(2025-05〜2026-09)と GA4 のデータで、落ち方を一度きちんと診断しました。推定で埋めた箇所はありません。分かったことは 5 つです。
1. 落ち始めは 2025 年の夏で、崖はない
1 年 3か月で -78%。ただし、どこかで一気に落ちた「崖」はなく、2025 年 7〜8 月から段階的に下がり続けています。
2. 基盤移行の前後で、段差はない
移行日(2026-07-04)をまたぐ週ごとのクリックは 235 → 250 → 208。前後 4 週の平均差は -6% で、それまでの下落トレンドの範囲内です。移行前後の 2か月比較でも、ページ別で -10%、クエリ別で +2%。移行で段差は付いていません。
3. 移行の技術的な欠落も、見つからなかった
移行前にクリック上位だった 80 URL について、HTTP ステータス・canonical・サイトマップ掲載を機械で確認しました。80 本すべて 200 で返り、canonical の欠落 0・不一致 0、サイトマップ掲載 80/80。確認したこの範囲では、技術的な欠落は見つかりませんでした。80 URL・3 項目の確認なので、それ以外の不具合がないとまでは言えません。
第5弾で「1 文字も変えずに移す」をハード制約にした意味は、ここにありました。移行を疑う余地を、最初から潰しておいたので、原因を別の場所に探しに行けました。
4. 落差は、少数のページに集中している
前年同期(6〜8 月)と比べたクリックの落差は、サイト全体で -65%。その落差の 82% を、上位 12 ページが占めていました。特に大きいのは 2 本で、PREP 法の記事とBANT 条件の記事だけで、落差の約半分です。
5. 落ち方は「順位低下」ではない。2 種類ある
ここが、いちばん大事な発見でした。落ちた記事の順位は、下がっていません。
PREP 法の記事は、2025年6〜8月と2026年6〜8月の比較で、表示回数が 103,721 → 22,916(-77.9%)、クリックが 2,287 → 851。一方でクリック率は 2.20% から 3.71% に 改善 し、平均掲載順位も各月で 8.1〜9.3 位から 5.5〜6.3 位に上がっています。つまり「順位を落として負けた」のではなく、「その検索語で、そもそも検索結果に出る機会が減った」。営業プレゼン、ボトルネック、KGI/KSF/KPI といった汎用語の記事も、2025 年 7〜9 月に同じ形で表示が急減しています。汎用語の検索結果で、記事が並ぶ場所そのものが減っている。AI Overviews や検索結果の構成変化が、最有力の説明です。
もうひとつが、BANT 条件の記事です。2025年6〜8月と2026年6〜8月を比べると、表示回数は 20,986 → 13,520(-35.6%)にとどまる一方、クリックは 1,530 → 362(-76.4%)。クリック率は 7.29% から 2.68% に落ちました。「BANTCH」系の検索語群のクリックは 300 → 76。検索結果の上で答えが完結する形になった可能性 がありますが、この数字だけでは確かめられていません。
第2弾で用語辞典を外したときの判断根拠は、「用語の意味を調べる検索は、検索結果上で答えが返るようになった」でした。今回の診断で分かったのは、同じことが、用語辞典よりずっと強かった汎用語の記事にも起きていた ということです。
おまけ:GA4 が平坦に見えた理由
診断の途中で、もうひとつ分かったことがあります。GA4 の「オーガニック検索」を見ていると、そもそも落ちているようには見えませんでした。2025年6〜8月と2026年6〜8月を比べると、オーガニック検索の合計は 16,148 → 16,675 セッションでほぼ横ばいです。中身は Google が -56.0%(10,048 → 4,418)、Bing が +142.6%(4,864 → 11,802)で、相殺されていました。2026 年 7 月は Bing が Google を上回りました。
中身を見ると(2026年6〜8月・11,722 セッション)、Bing 流入の 97% が日本、98% がデスクトップ、96% が Edge ブラウザ。曜日では 92% が月〜金、時間帯では 78% が 9〜17 時に集中していました。着地先は 49% が TAM/SAM/SOM の記事 1 本です。ここまでが観測値です。
この並びからは、Edge の既定検索が Bing である環境からの流入ではないかと考えていますが、誰が来ているかは確かめていません。滞在 0 秒のセッションも月 450〜620(Bing の 12〜15%)あります。着地先が 1 本に偏っていることが、事業にどう効くかも、この数字だけでは分かりません。
教訓はひとつ。GA4 の「オーガニック」を KPI にすると、Bing の混入で Google の落ち方を見誤る。以後、このサイトの検索 KPI は Search Console の Google データに揃えました。
この診断で、何が変わったか
診断の結果を、判断に落とします。
- 汎用語のページに SEO 投資をしても、回復しにくい。表示機会そのものが減っている検索語で、順位を上げても戻る余地が小さい。第3弾で「検索流入の規模ではなく、検討プロセス上の役割で記事を決める」と決めた方向は、数字で裏付けられました
- 「捨てる」は主張を絞るための判断で、「戻す」は別の問題。noindex に副作用がなかったとまでは言えませんが、外した後も流入は戻っていません。戻すのは、この土台の上に置く記事の役割設計です
- 測る前に、対照群を決める。今回「順位回復・カニバリ解消」を検証できなかった最大の理由は、事前に比較対象を固定していなかったことです。次のテストからは、介入群と対照群を先に決めてから実行しています
その「次のテスト」が、すでに動いています。
第7弾で答え合わせすること
2026-09-06 に、教科書サイトの記事 9 本について、本文はそのままに検索結果に出る文字だけを書き換えるテストを本番に反映しました。タイトルとメタディスクリプションを変えた 1 本と、メタディスクリプションだけを変えた 8 本です。対照群(非介入の上位 10 本)を先に固定し、Google 検索のクリックと表示回数を、反映日から 6 週間以上ためてから比較します。
実は、このテストは 7 月末にいったん「実施した」つもりになっていました。ところが 9 月に確認すると、変更が本番サイトに反映されていなかった。「マージした=公開された」という思い込みで、1か月ぶんの観測が空振りになった、というのが事実です。本番への反映を自動化し、反映後のページを実際に確認する手順を入れ直したうえで、Day0 を 2026-09-06 に置き直しました。
この結果は、第7弾で答え合わせします。10 月下旬以降になる見込みです。
プロレクトはこれをどう提供価値につなげるか
プロレクトが事業として扱っているのは、BtoB 企業のホワイトペーパー・ウェビナー・SEO 記事・営業資料を、それぞれ単体ではなく、商談・受注につながる導線上の役割として設計・再設計する 作業です。
この連載で、私たちは自社サイトで「捨てる → 土台を確認する → 診断する → 足す」を、データを見ながら順番に進めてきました。第6弾まで来て実感しているのは、施策そのものより「何を・いつ・どの指標で見るか」を先に決めておくこと が、いちばん事故を防ぐということです。順位を見ていたら、表示回数の消失に気づけなかった。GA4 だけ見ていたら、Bing の混入で落ち方を見誤った。対照群を決めていなかったから、効いたかどうかを言えなかった。
「やってみたが、効いているのか分からない」という相談を、よくいただきます。多くの場合、足りていないのは施策ではなく、観測の設計 です。
本記事は、「転落と再構築」シリーズの第6弾です
転落編(第1弾)から始まったこのシリーズは、止血・再構築・仕組み化・移行を経て、本記事で noindex の答え合わせと流入減の診断まで進みました。
- 第7弾(予定):タイトル・メタディスクリプション改修テストの答え合わせ ── 介入 9 本 vs 対照 10 本、6 週間以上のデータで
シリーズを通して、私たち自身の試行錯誤の過程を、できる限り生のまま公開してきました。答え合わせも、同じ姿勢で続けます。