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プロレクト調査レポート #02 | 全文公開(フォーム入力不要)

AI時代のBtoB購買行動レポート

買い手は、営業に会う前に何をしているか。

生成AI・AI検索・情報過多が変える買い手の意思決定と、売り手が再設計すべき受注導線。

本レポートは、前号『2026年BtoB受注導線・勝ちパターン研究レポート』(Report #01)と対をなす2部作の後編です。前号が「売り手」の側から導線を構造化したのに対し、本号は「買い手」の側から市場を見ます。

発行
プロレクト株式会社
公開日
調査時点
2026年6月〜7月
シリーズ
PROLLECT RESEARCH ― REPORT #02
分量
全21ページ(PDF版)
PDF版を無料ダウンロード(約1.4MB) フォーム入力は不要です。全文はこのページでもお読みいただけます。

00 エグゼクティブサマリー ― 3行でわかる、買い手の現在地

本レポートの結論を先に示します。時間のない読者は、この章と08章だけでも要点を持ち帰れるように設計しています。

結論①:購買の勝敗は、営業に会う前にほぼ決まっている

バイヤーが営業面談に使う時間は購買プロセス全体のわずか17%(Gartner)。国内でも、営業との初回面談前に85%の買い手が候補を絞り込み済みで、29%は「ほぼ決定」しています(ワンマーケティング 2025年、n=600)。つまり競争力の源泉は商談の場ではなく、買い手が一人で情報を集めている時間帯に「届く情報」の設計へ移りました。

結論②:買い手の最初の相談相手が、検索からAIに変わりつつある ― ただし「置き換え」ではなく「併用」

検索手段としての生成AI利用率は、1年足らずで21.3%から37.0%へ急伸(CyberAgent GEOラボ、2026年2月調査、n=9,278)。BtoBバイヤーのLLM利用率は94%に達します(6sense 2025)。一方、AI概要が表示された検索では1位コンテンツのクリック率が58%低下(Ahrefs、2025年12月データ)。買い手はAIで全体像を掴み、検索と企業サイトで検証する「二段構え」に移りました。だから売り手の論点も、SEO順位から「AIに引用され、検証の受け皿になる情報設計」へ広がります。

結論③:買い手が本当に困っているのは「情報不足」ではなく「社内の合意形成」

購買関与者は社内13人+社外9人(Forrester 2026)、国内でも稟議の8割超が2段階以上(IDEATECH 2026)。それでいて、良質な情報が多すぎることで購買の86%が途中で失速します。買い手が求めているのは、もっと多くの資料ではなく「自分の会社で通る理屈」と「決断の自信」です。コンテンツと営業の役割は、ここから逆算して再設計する必要があります。

2026年、買い手を象徴する市場データ

85% 37.0% 69% 86%
営業初回面談前に候補を絞り込み済みの買い手(国内)検索手段としての生成AI利用率(国内・1年で約1.7倍)AI生成インサイトを「営業で検証」したい買い手途中で失速する購買

出典:ワンマーケティング「BtoB購買プロセス白書2025」/ CyberAgent GEOラボ第三弾(2026年2月調査)/ Gartner(2026年5月)/ Forrester。詳細は付録参照。数値は各調査の母集団に依存します。

本レポートが導く「買い手起点の設計公式」

買い手の6つの購買ジョブを見立てる × 営業前に届く情報を置く(引用される設計) × 社内で使える道具を渡す(稟議資料化) × 営業は検証者として設計する = 買い手が自分で確信に至る受注導線

01 前提:買い手の側で起きた4つの変化

前号では、勝っている企業の側から市場の構造変化を見ました。本レポートはその対になる問いから始めます ― 買い手の側では、いま何が起きているのでしょうか。

売り手の導線がどう変わるべきかは、突き詰めれば買い手の行動から逆算するしかありません。まず、その出発点になる4つの変化を整理します。

変化① 購買の形は「営業に会う前」に決まりつつある

バイヤーが営業との面談に費やす時間は、購買プロセス全体の17%にすぎません(Gartner)。国内でも、営業との初回面談の前に85%の買い手が候補を絞り込み済みで、29%は「ほぼ決定」しています(ワンマーケティング 2025年、n=600)。決裁者の84%は、購買を決定づけた情報を営業接触前に入手しています(wib 2024年)。

つまりこの数字が示しているのは、「営業がうまく説明できたか」よりずっと手前 ― 買い手が一人で情報を集めている時間帯に、勝負の大半が進んでいるという構造です。受注導線設計の視点で言えば、競争力の源泉は商談の場ではなく、「営業前に届く情報」の設計に移っています。

変化② 情報収集の起点が、検索からAIへ ― ただし「置き換え」ではなく「併用」

検索手段としての生成AI利用率は、1年足らずで21.3%から37.0%へ伸びました(CyberAgent GEOラボ、2026年2月調査)。20代では初めて過半数を超えています。BtoBバイヤーに限ればLLM利用率は94%に達します(6sense 2025)。一方で、AI概要が表示された検索では1位コンテンツのクリック率が58%下がるという実測もあります(Ahrefs、2025年12月データ・キーワード30万件)。

ここで重要なのはAIそのものではありません。買い手は検索を捨てたのではなく、AIで全体像を掴み、検索と企業サイトで確かめる「二段構え」に移った ― この行動の変化です。だから売り手側の論点も「SEO順位」から、「AIに引用され、検証の受け皿になる情報設計」へと広がります。

変化③ 購買は「集団スポーツ」になった

購買の関与者は社内13人+社外9人(Forrester 2026)。国内の中堅企業でも「選定メンバー4〜5人+選定の外にいる承認者2〜3人」が中心帯です(マツリカ 2022年、従業員100名以上・100万円以上の購買)。稟議は8割超が2段階以上を通ります(IDEATECH 2026)。

この変化が意味することは ― 買い手にとって最大の仕事が「選ぶこと」から「社内を通すこと」に変わった、ということです。売り手が向き合う相手は目の前の担当者一人ではなく、その後ろにいる合議体全体になりました。

変化④ 情報は足りないのではなく、多すぎて決められない

バイヤーの89%は、出会った情報を「高品質だった」と評価しています。それでも、購買の86%は途中で失速します(Gartner/Forrester)。

つまり買い手を止めているのは情報の不足ではなく、良質な情報の過剰です。資料をもう一本増やすことは、多くの場合もう支援になりません。では、売り手は何を変える必要があるのでしょうか。その見取り図として、次章では買い手の購買プロセスを6つの「ジョブ」に分解し、売り手の受注導線5レイヤーと突き合わせます。

02 分析フレーム:購買6ジョブ × 受注導線5レイヤー

買い手の変化を売り手の設計に翻訳するには、両者を突き合わせる「物差し」が必要です。本レポートでは、Gartnerが示す買い手の6つの購買ジョブと、前号で提示した売り手の受注導線5レイヤーを対応させたフレームを使います。

買い手の購買は、直線的なファネルでは進みません。Gartnerはこれを6つのジョブの並行的な遂行として再定義し、典型的な購買では各ジョブを少なくとも一度は再訪する(ループする)としています。買い手がループするからこそ、売り手は5つの層を「線」で繋いでおく必要がある ― これが本フレームの読み筋です。

対応表:買い手のジョブに、売り手はどの層で応えるか

買い手の購買ジョブ 買い手の問い 売り手のレイヤー 売り手が置くべきもの(実測の裏付け)
① 課題特定何か手を打つべきかL1 認知/需要創出課題啓蒙+独自データ。生成AI活用の最多用途は「課題・ニーズの整理/言語化」(HubSpot Japan 2026)
② 解決策探索どんな手段があるかL2 興味/信頼形成カテゴリ解説・事例・人の発信。認知段階の情報源は検索・Webメディアが首位(メディックス)
③ 要件定義何ができればよいかL3 接点/シグナル要件チェックリスト・比較の評価軸(=高意図シグナルの検知点)
④ サプライヤー選定これは要件を満たすかL3→L4規模別・業種別の事例、レビュー、比較。候補入りの決め手1位は「自社と似た規模の事例」44.3%(IDEATECH 2026)
⑤ 検証本当に正解か確信したいL4 商談化ROI試算・PoC・センスメイキング型の対話。後半フェーズは「営業による説明・提案」が最重視(ワンマーケティング 2025)
⑥ 合意形成全員の賛同を得たいL4 商談化(核心)稟議テンプレ・部門別便益・リスク整理。稟議2段階以上が8割超、却下理由の首位は「知名度」(日経リサーチ)
(購買後)この選択は正しかったかL5 受注/拡大事例化・レビュー・成果データ → 次の買い手の①へ循環

この対応表は、本レポート全体の見取り図であると同時に、08章のセルフチェックの設計図でもあります。以降の章では、この表の中身を ― 買い手の実像(03章)、コンテンツ(04章)、見つかり方(05章)、営業(06章)の順に ― 具体的に見ていきます。

03 買い手の実像:「営業前」の世界で起きていること

03-1 買い手は自走している ― しかし、営業から離れてはいない

「買い手はAIで自己完結し、営業は不要になる」― よく聞く見方です。しかし一次データを見ると、実態は少し違う形をしています。

6senseの最新調査では、営業との初回接触は購買ジャーニーの61%地点。前年の69%から、むしろ早まりました。同調査は「LLMの利用はベンダーへの接触回数を減らしていない」と明記しています。さらにGartnerの2026年5月調査では、バイヤーの69%が「AIが生成したインサイトを、営業担当者で検証する」ことを選ぶと答えました。

これらを整理すると、こう捉える方が実態に近いようです:買い手はAIで下調べを高速化し、営業には「検証者」という新しい役割を求め始めている。 営業が不要になったのではなく、営業に会う理由が変わった ― 受注導線の設計では、この「新しい会う理由」を接点として用意できるかが分かれ目になります。

03-2 rep-free志向をどう読むか

「営業なし(rep-free)の購買体験を好む」バイヤーは67%(Gartner 2026年3月)。この数字だけ見ると営業の居場所はなさそうです。ところが同じGartnerの調査には、もう一つの数字があります ― デジタルツールを営業と協働で使う買い手は、独力の買い手より高品質な取引を完了する確率が1.8倍。

二つの数字を並べると、買い手が避けているものの輪郭が見えてきます。避けられているのは営業そのものではなく、一方的な説明営業です。そして求められているのは、情報の交通整理と、決断の自信を与えてくれる相手。この役割転換の中身は06章で扱います。

03-3 合議体の中では、担当者が「売り手の代理」を務めている

社内6人以上が関与する購買グループの94%が「大人数にはメリットがあった」と答えています(Forrester 2026)。視点の広さ、検証の分担、誤判断リスクの低減 ― 大人数化は買い手にとって合理的な選択であり、元に戻ることはなさそうです。

ここで示唆的なのが、新規取引の社内申請が却下される理由の首位が「会社の知名度」だという国内データです(日経リサーチ)。つまり商談の後、買い手の担当者は社内で売り手の代わりに稟議を戦っています。そして知名度のない売り手の分だけ、その戦いは不利になる。受注導線設計の視点では、支援すべき本当の相手は目の前の担当者ではなく、その先にいる「まだ会っていない承認者たち」だと言えます。

03-4 この章のまとめ ― 三重の状態にある買い手

ここまでを整理すると、いまの買い手は三重の状態にあります。速くなり(AIで下調べ)、慎重になり(合議と稟議)、疲れている(情報過多)。

この相手に「もっと多くの情報」を届けても、状況は良くなりません。必要なのは、買い手が6つの購買ジョブのどこで詰まっているかを見立て、そこに合った支援を線で置くことです。次章からは、その「支援の中身」を具体的に見ていきます ― まず、コンテンツの価値がどう入れ替わったのかから。

04 コンテンツの価値が入れ替わった ― 「読ませる」から「使わせる」へ

前章で見たとおり、買い手は情報の不足ではなく過剰に疲れています。では、その買い手にとって「それでも価値のあるコンテンツ」とは何でしょうか。この章では、AI時代に価値が下がったもの・上がったものを整理します。

04-1 価値の変動マップ

分岐を分けているのは品質ではありません。「AIが代わりに作れるか」と「買い手の意思決定を実際に前へ進めるか」の二軸です。

コンテンツ AI時代の価値 理由
「○○とは」型の汎用解説低下 ▼AIが要約・代替。量産の費用対効果が急落
課題啓蒙コンテンツ維持 →独自視点・自社データを伴えば一次ソース化
比較検討コンテンツ上昇 ▲意思決定段階で有用。AIにも引用されやすい
導入事例上昇 ▲規模別・業種別の細分化が稟議の決め手に
ROI試算・TCOツール上昇 ▲AIがまだ弱い領域。稟議資料に直結
チェックリスト/稟議テンプレ上昇 ▲社内合意形成を直接前進させる
独自調査レポート上昇 ▲▲AIが生成できない一次情報。引用の源泉

興味深いのは国内の実測です。購買検討層の約6割が「ROI計算シミュレーター」「運用負荷の見積もり」を有用と評価した一方、約半数が「機能比較表」は購買判断に影響しないと答えました(IDEATECH 2026)。つまり買い手が求めているのは、総花的なスペックの一覧ではなく、自社の状況に当てはめて試算できる道具です。ここに、価値変動の本質が表れています ― 評価軸は「情報として正しいか」から「そのまま社内で使えるか」へ移りました。

04-2 ホワイトペーパーは死んだのか

ホワイトペーパーには厳しい数字が並びます。マーケターの86%が重視する一方、有用と答えたバイヤーは27%(Scribewise 2024年、ダブルブラインド調査)。国内では88.2%が、ベンダー資料に「がっかりした経験がある」と答えました ― 理由の首位は「内容が薄く一般的な情報しかなかった」70.5%(IDEATECH 2026)。

ではWPは終わったのでしょうか。私たちの整理は違います。終わったのは「フォームでリードを集めるためのWP」であって、WPという形式そのものではありません。 実際、300万円以上の大型購買では、候補リストアップ時の参照情報源としてWP・資料が41.0%で上位に入り、最終判断への影響が最も大きかった情報も「WP・資料」20.3%でした(IDEATECH 2026)。がっかりされているのに、参照はされている ― この矛盾こそが、WPの再設計余地の大きさを示しています。

04-3 空白地帯:「稟議にそのまま使える」資料は、まだ誰も完成させていない

再設計の方向は、前章の結論から素直に導けます。買い手の最大の仕事が「社内を通すこと」なら、最強のWPは「そのまま稟議に添付できる資料」です。

国内の実例を調べると、要素は既に出揃っています。稟議書の作成ポイントと費用比較表を提供する例(SATORI)、「稟議書の添付書類として自由に編集・配布可能」と明記した導入企画書テンプレートを配る例(セイ・テクノロジーズ)、ROI試算をWebツールで代行する例(SmartHR「コスト削減シミュレーター」)。方法論としては、才流が「目標達成型・危機感醸成型」の稟議書テンプレートを公開し、「重要ページ以外はベンダー提供資料を活用せよ」と稟議転用を明示的に推奨しています。

しかし ― ROI試算・比較表・稟議テンプレの3要素を1つに同梱した資料の公開実例は、今回の調査では確認できませんでした。 各社が要素を分担提供している状態です。受注導線設計の視点で言えば、ここは数少ない「先行者がいない接点」です。買い手の合意形成ジョブ(02章⑥)に対する最も直接的な支援でありながら、まだ空白のまま残っています。

04-4 ウェビナーの再定義 ― 集客装置から「会う理由」へ

ウェビナーは、バイヤー評価が高い数少ないフォーマットです。国内では、候補リストアップ時に参考にした情報源の首位がベンダー主催ウェビナー(42.3%)でした(IDEATECH 2026)。ただし視聴の実態は変わっていて、国内データでは視聴の63%がライブではなく後追いのオンデマンドです(シャノン)。

この変化をどう読むべきでしょうか。オンデマンド化とAI要約の時代に、録画で代替できないライブの価値は絞られます ― 質疑応答と、専門家との直接対話です。03章で見たとおり、買い手が営業に求め始めたのは「AIの下調べを検証してくれる相手」でした。ウェビナーのライブ部分は、まさにその「検証の場」を提供できます。つまりウェビナーの設計思想は、視聴者数を集める装置から、買い手が売り手に会う理由を作る接点へ ― ここでも評価軸は「量」から「導線上の役割」に変わっています。

この章で見た「使わせるコンテンツ」への転換は、しかし一つの前提に立っています ― そもそも買い手に見つけてもらえること。次章では、その「見つかり方」自体がどう変わったのかを見ます。

05 「検索される」から「引用される」へ ― AI時代の見つかり方

05-1 SEOの前提が崩れつつある

AI概要が表示された検索では、1位コンテンツのクリック率が58%下がります(Ahrefs、2025年12月データ・キーワード30万件)。AI概要内のリンクがクリックされる割合はわずか1%(Pew Research)。BtoBテック系クエリでAI概要が表示される割合は、12か月で36%から82%へ拡大しました(Search Engine Land)。

数字を並べると悲観的に見えますが、構造で捉えると違う景色になります。減っているのは「検索結果ページからのクリック」であって、買い手の情報収集そのものではありません。買い手は今も調べています。ただし、その入口にAIの要約が挟まるようになった ― 論点は流入の減少ではなく、この「新しい入口の内側」に入れるかどうかです。

05-2 AI経由の訪問は「少ないが、濃い」

AI経由の参照トラフィックには一貫した傾向があります ― 量は少なく、質は高い。ChatGPT参照の訪問はコンバージョン率で有料検索に次ぐ2位(Similarweb 2026)、標準オーガニックの約4.4倍(Semrush)という分析もあります。※倍率はベンダー系調査が多く、幅をもって見る必要があります。

方向性として言えるのはこうです:AIの回答を経て来る買い手は、すでに要約を読み、候補を絞り、確かめに来ている。前号で示した「高意図の指名流入」が、AI経由で再現されている形です。だから受注導線の設計では、AI経由の訪問数を追うより、その訪問を受け止める先(比較・事例・診断)を整えることが先になります。

05-3 誰が引用されているのか ― 日本の実測は「二層構造」

では、AIは実際に何を引用しているのでしょうか。日本の実測データを突き合わせると、興味深い二層構造が見えます。

SaaS購買系のクエリでは、比較・レビュー媒体が引用元の上位に並びます ― ITトレンド、BOXIL、ITreview、アイミツSaaS等(ipe「AKARUMI INSIGHTS」2026年5月、SaaS領域300プロンプト実測)。ところが汎用クエリまで広げると、これらの媒体はTOP10圏外に落ち、PR TIMESやITmediaなど汎用メディアが上位を占めます(Ahrefsブランドレーダー日本版 2026年)。

つまり、買い手が「購買モード」の質問をしたときにだけ、レビュー媒体の層が現れる。売り手にとっての含意は明確です ― 自社サイトのGEO対応と、第三者レビュー媒体上の充実は、別々の施策ではなく同じ「引用される設計」の内側と外側です。海外でも、ファネル下部のプロンプトほどレビューサイトの引用が濃くなる実測があります(Omniscient Digital 2026)。※引用率は対象AI・プロンプト設計に強く依存し、手法により結果が割れる点は明記しておきます。

05-4 「引用される」ための設計原則

各種調査から、AIに引用されやすい要素は一定の像を結んでいます。冒頭60〜120語の要約、FAQ、構造化データ(スキーマ)、そして統計・独自データの保有 ― 一次データを含むコンテンツは被引用率が30〜40%高いという分析があります。

ここで前号の読者は気づくはずです。この設計原則は、前号を非ゲート・構造化・一次データ付きで公開した設計そのものです。そして本レポートも同じ原則で作られています。「引用される」は理論ではなく、実装できる設計です。

見つかり方が変わり、コンテンツの価値が入れ替わった。残る最後のピースは「人」です ― 次章では、営業の役割がどこへ向かうのかを整理します。

06 営業の役割はどこへ向かうのか ― 「説明する人」から「決めるのを助ける人」へ

ここまで、買い手の変化(01〜03章)と、コンテンツ・見つかり方の変化(04〜05章)を見てきました。最後のピースは「人」です。AIが下調べを肩代わりする時代に、営業には何が残るのでしょうか。

06-1 買い手が営業を「使う」場面は、むしろはっきりした

03章の整理を思い出してください。買い手の69%はAIが生成したインサイトを営業担当者で検証することを選び(Gartner 2026年5月)、営業との協働はディールの質を1.8倍にします。国内でも、購買プロセスの後半フェーズ(提案評価・選定・見積比較)では「営業による説明・提案」が最重視の情報源に返り咲きます(ワンマーケティング 2025)。

つまり営業の出番は消えたのではなく、移動しました。前半の「情報を届ける仕事」はコンテンツとAIに置き換わり、後半の「決めるのを助ける仕事」に凝縮された ― これが一次データの示す構図です。

06-2 センスメイキング ― 情報を増やさず、確信を増やす

この「決めるのを助ける」営業には、名前があります。Gartnerが提唱するセンスメイキング(sense making) ― 情報を提供するのではなく、買い手が氾濫する情報を評価し、矛盾を整理し、自分なりの理解と確信に至るのを支援するアプローチです。

効果も測定されています。Gartnerの調査では、センスメイキング型の営業に接した買い手の購買満足度は約80%。対して、情報を一方的に語る「テリング型」は約50%、資料を大量に渡す「ギビング型」は約30%にとどまります。買い手の情報への自信を高められると、高品質な購買の可能性は1.6倍になる ― 04章で見た「情報過多のパラドックス」の、人的な側の解がここにあります。

なお、この概念の日本語での一次的な解説は、DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー2022年4月号のアダムソン論文(「センスメイキングのアプローチを実践する」)がほぼ唯一で、国内企業の適用公表事例はまだ確認できません。組織論のセンスメイキング(Weick)とは別系統である点も付記しておきます。国内実務への翻訳は、これから始まる領域です。

06-3 では、何から変えるのか

センスメイキングは研修一発で身につく話法ではなく、導線の設計と一体です。買い手のジョブ(02章)に沿って言えば ― ⑤検証の段階では、機能説明の代わりにROI試算を一緒に埋める。⑥合意形成の段階では、クロージングの代わりに「承認者ごとの懸念リスト」を一緒に作る。営業の商談を「説明の場」から「買い手の社内提案の準備室」に変える ― 受注導線設計の視点では、これは営業改革ではなく、L4(商談化)レイヤーの接点の再設計です。

買い手の変化、コンテンツの変化、見つかり方の変化、営業の変化。部品はすべて出揃いました。最終章では、これらを貫く設計原則に束ねます。

07 考察 ― 買い手の変化から導く、5つの設計原則

ここが本レポートの核心です。01〜06章で見た買い手の変化を、売り手の「設計原則」に翻訳します。前号が勝者の共通項を示したのに対し、本章はなぜそれが勝つのかを買い手の側から裏付けるものです。

原則① 勝負は「営業前」― だから、届く情報を先に置く

買い手の85%は初回面談前に候補を絞り込み、社内申請の却下理由の首位は「知名度」でした。つまり売り手は、まだ会っていない相手の中で選ばれ、まだ会っていない承認者の中で落とされています。設計の含意:接点の投資配分を「商談後」から「商談前」へ。前号の言葉で言えば、L1〜L2(認知・信頼形成)は施策ではなく先行投資型の資産です。

原則② 「引用される」を新しい入口にする ― 内と外の両輪で

買い手の入口にはAIの要約が挟まり、購買系クエリではレビュー媒体が引用の上位に現れました。設計の含意:自社サイトの構造化・一次データ(内側)と、レビュー・第三者言及(外側)は一体の施策です。どちらか一方では、AIの回答の中に立てません。

原則③ 資料は「読ませる」ではなく「社内で使わせる」ために作る

買い手の最大の仕事は社内を通すこと。それなのに、ROI試算・比較表・稟議テンプレを同梱した資料は市場にまだ存在しませんでした。設計の含意:コンテンツの評価基準を「DL数」から「買い手の稟議に登場したか」へ。空白地帯は、最初に埋めた売り手の参入障壁になります。

原則④ 営業は「検証者」として設計し直す

買い手はAIの下調べを営業で検証したがっています(69%)。避けられているのは営業ではなく説明営業でした。設計の含意:商談の台本を「伝える」から「整理する」へ。L4の接点は、買い手の社内提案の準備室として設計する。

原則⑤ 「もっと」ではなく「ここで詰まっている」から始める

情報過多で購買の86%が失速する市場では、施策の追加はしばしば逆効果です。設計の含意:6ジョブ×5レイヤーの対応表(02章)で買い手がどこで詰まっているかを見立ててから、そこに接点を置く。前号の結論 ― 勝者は施策巧者ではなく導線設計者 ― の買い手側からの証明が、これです。

結び:買い手は、説得されたいのではない

本レポートを一行に要約するなら、こうなります。買い手は説得されたいのではなく、確信したい。そして、社内を通したい。 売り手にできる最良の支援は、声を大きくすることではなく、買い手が自分で確信に至る道筋 ― 営業前に届く情報、引用される設計、稟議で使える資料、検証者としての営業 ― を、線で繋いで置いておくことです。

その線のどこが繋がっていて、どこが切れているのか。最後に、買い手の目線で自社を点検する7つの問いを用意しました。

セルフチェック:買い手の目線で見たとき、自社はどう見えていますか?

本レポートで見てきた買い手の変化に、自社の受注導線は応えられているでしょうか。最後に、買い手の購買ジョブ(02章)に対応した7つの問いで点検してください。前号のセルフチェックが「導線の内側」の点検だったのに対し、今回は「買い手から見た外側」の点検です。

当てはまるものにチェックを付けてみてください。

判定:チェックの数でわかる、買い手からの見え方 (チェック数: 0 / 7)

チェックを付けると、ここに判定が表示されます。

付録 ― 方法論・推定値の扱い・主要出典一覧

方法論と注意事項

本レポートは、グローバル調査機関(Gartner・Forrester・6sense等)および国内調査(IDEATECH・ワンマーケティング・CyberAgent GEOラボ・マツリカ等)の公開情報を一次情報優先でWeb調査により収集し、プロレクトの「受注導線設計」の観点から構造化したものです。土台調査:2026年6月、追加調査・数値照合:2026年7月。年次更新される指標(rep-free選好率、6sense営業接触地点、CyberAgent生成AI利用率、Ahrefs CTR等)は2026年7月時点の最新版に照合済みです。

推定値の扱い

数値は各調査の母集団・定義・調査手法に依存します。出典の異なる数値の単純比較は避けてください。AI経由トラフィックの転換率倍率はベンダー系調査が多く、方向性として解釈すべきものです。Gartnerの一部予測はシナリオモデルであり確定予測ではありません。6ジョブ×5レイヤー対応表(02章)・価値変動マップ(04章)・設計原則(07章)はプロレクトの分析視点による構成物です。

主要出典(抜粋)

グローバル: Gartner「The B2B Buying Journey」/ Gartner Press Release 2026-03-09(rep-free 67%)・2026-05-20(AI検証 69%)/ Forrester「The State of Business Buying 2026」/ 6sense「2025 Buyer Experience Report」/ McKinsey / Scribewise「2024 Content Marketing Disconnect」

検索・AI検索: Ahrefs「AI Overviews Reduce Clicks by 58%」(2026年2月更新)/ Pew Research(2025年7月)/ Search Engine Land / Similarweb / Semrush / Omniscient Digital(2026年2月)

国内: ワンマーケティング「BtoB購買プロセス白書2025」/ CyberAgent GEOラボ 生成AI利用実態調査 第三弾(2026年3月)/ IDEATECH×デマジェン総研「日本のBtoB大型購買プロセス実態調査」(2026年)/ マツリカ「Japan Sales Report 2022 Buying Study」/ HubSpot Japan「営業意識・実態調査2026」/ メディックス / トライベック・ブランド戦略研究所 / ITコミュニケーションズ / 日経リサーチ / wib / ipe「AKARUMI INSIGHTS」(2026年5月)/ Ahrefsブランドレーダー日本版 / 才流 / SATORI / エイトレッド

センスメイキング: ブレント・アダムソン「センスメイキングのアプローチを実践する」DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー 2022年4月号(原題 "Sensemaking for Sales" HBR 2022年1-2月号)/ トライツコンサルティング

あわせて読む: 04章で見た「社内を通す」フェーズの素材設計は、ダウンロード資料でも詳しく扱っています。

社内検討・稟議突破フェーズの素材設計ガイド →

用語の定義(FAQ)

本レポートの主要概念を、初出の読者向けに定義する。数値の出典は本文・付録に記載。

購買6ジョブとは何ですか?

Gartnerが示すBtoB購買の6つの仕事です ― ①課題特定、②解決策探索、③要件定義、④サプライヤー選定、⑤検証、⑥合意形成。購買は直線的なファネルでは進まず、6つのジョブの並行的な遂行として再定義され、典型的な購買では各ジョブを少なくとも一度は再訪する(ループする)とされます。本レポートはこの6ジョブを、売り手の受注導線5レイヤーと対応させて分析しています。

センスメイキング(sense making)とは何ですか?

Gartnerが提唱する営業アプローチで、情報を提供するのではなく、買い手が氾濫する情報を評価し、矛盾を整理し、自分なりの理解と確信に至るのを支援するものです。センスメイキング型の営業に接した買い手の購買満足度は約80%と、情報を一方的に語るテリング型(約50%)、資料を大量に渡すギビング型(約30%)を大きく上回ります。

rep-free(レップフリー)とは何ですか?

営業担当者なしの購買体験を指します。これを好むバイヤーは67%(Gartner 2026年3月)ですが、同じGartnerの調査では、デジタルツールを営業と協働で使う買い手は独力の買い手より高品質な取引を完了する確率が1.8倍です。買い手が避けているのは営業そのものではなく、一方的な説明営業だと本レポートは整理しています。

GEO(Generative Engine Optimization)とは何ですか?

ChatGPT・Perplexity・Gemini等のAI検索に「引用・推奨される」ことを設計する取り組みです。検索手段としての生成AI利用率は1年足らずで21.3%から37.0%へ伸び(CyberAgent GEOラボ)、AI概要が表示された検索では1位コンテンツのクリック率が58%下がります(Ahrefs)。冒頭60〜120語の要約・FAQ・構造化データ・統計や独自データの保有が引用されやすい要素で、一次データを含むコンテンツは被引用率が30〜40%高いという分析があります。

前号(Report #01)との関係は?

本レポートは、前号『2026年BtoB受注導線・勝ちパターン研究レポート』の対になる一冊です。前号が「勝っている売り手」の側から受注導線を構造化したのに対し、本レポートは「買い手」の側から市場を見ています。前号も全文無料・非ゲートで公開中です。

このレポートは引用・共有できますか?

はい、引用・共有を歓迎します。引用の際は出典として「プロレクト株式会社『AI時代のBtoB購買行動レポート』」を明記してください。数値は各調査の母集団・定義に依存するため、出典の異なる数値の単純比較は避けてください。

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無料相談|受注導線の論点整理

プロレクト株式会社は「受注導線設計」を専門とするコンサルティングファームです。無料相談(30分)では、売り込みは行わず、次の3点までに絞ってお話しします。

  1. 現状のヒアリング ― 商材・受注プロセス・実施中の施策の確認
  2. 要因仮説の整理 ― 受注に繋がっていない要因はどこにあるか
  3. 論点整理 ― 次に見るべき論点と、優先的に手を入れるべき接点

相談後には、伺った内容と論点を整理したメモをお送りします。そのうえで必要と判断した場合のみ「受注導線設計パッケージ」をご提案します(提案しない場合もその旨を明確にお伝えします)。

無料相談で論点を整理する

買い手が社内を通すための、資料の設計・制作支援

プロレクトでは、受注導線設計の一環として、稟議に添付できるホワイトペーパー、ROI試算資料、比較表、選定基準資料、社内説明用の導入企画書など、買い手が社内を通すための資料の設計・制作支援も行っています。

単に資料を作るのではなく、買い手の検討・比較・稟議・合意形成のどこで使われる資料なのかを整理し、受注導線上の役割から設計します。

資料づくりのご相談も、無料相談から →

作った資料を増やす前に、まずは受注導線のどこで買い手が止まっているのかを整理する。そこから、商談・受注につながる資料づくりは始まります。