引き継いだ共有フォルダに、ホワイトペーパーが3本、記事が40本、事例が2本。サービス資料もある。それでも、どれが今も使えて、どれが古いのかを聞かれると、答えられない。
こうなるきっかけは、だいたい3つのどれかです。
- 担当が変わった。前任者が辞め、引き継ぎはフォルダとメモ1枚だった
- 事業が変わった。サービス名や価格が変わり、資料が追いついていない
- 時間が経った。作ってから2年が過ぎ、本数だけが増えた
きっかけは違っても、分からなくなることは同じです。何が使えるか。何が古いか。競合と比べてどうか。マーケ施策と営業で、どれが使われているか。
こういうとき、全部を作り直したくなるかもしれませんし、新しい施策を始めたくなるかもしれません。私は、どちらの前にも、今あるものの整理から始めることをすすめます。コンテンツの良し悪しを見る前に、顧客・事業・競合が前任者のときから変わったかを確かめる。今ある資産を「残す・直す・捨てる・足す」に分ける。次の90日で先にやる3つを決める。この順番です。3つのどのきっかけでも、同じ順番で使えるように組んでいます。
この記事は、BtoBのマーケティング担当になったばかりの方、前任者から引き継いだ方、事業が変わって今のコンテンツが合っているか不安な方、作ってから時間が経って見直したい方に向けて書いています。担当者に手順を渡したい事業責任者の方にも使えるように、手順ごとに何を見るかを表にしました。
読み終えたら、末尾の「明日、確認する3つ」に、自社のコンテンツで答えてみてください。
1名や兼任で担う会社は、少なくない
この整理を、限られた体制で進める会社は少なくありません。
PLAN-Bが従業員10〜299名の中小企業のマーケティング担当者200人に行った調査(2025年3月)では、マーケティングの体制について「専任担当者がいる(1名)」が16.5%、「他業務と兼任している担当者がいる」が24.0%でした。合わせて約4割の企業が、1名や兼任でマーケティングを担っていることになります。同じ調査で、体制の課題として挙がった上位は「人員・リソースが不足している」(42.0%)と「マーケティング戦略の設計が十分にできていない」(38.5%)でした(複数回答)。
課題の中身についての調査もあります。ナイルが2023年8月にマーケティング担当者513人に行った調査では、BtoBの担当者の課題として最も多く挙がったのが「競合分析」(48.3%)でした。
時間が限られ、競合まで見なければならないなら、手を付ける順番が要ります。この記事でも、競合の見方を手順の一つとして扱います。
出典:株式会社PLAN-B「中小企業のマーケティング体制と外注活用の実態調査 2026」(調査期間 2025年3月27日〜28日・n=200)/ナイル株式会社「マーケティングにおける課題調査」(調査期間 2023年8月21日〜25日・n=513、うちBtoB 246)
ありがちな2つの失敗:全部作り直す、すぐ新しい施策を始める
何が使えるか分からなくなったとき、動き方は2つに分かれがちです。
1つ目は、古いから全部作り直すことです。顧客や事業の変化を確かめないまま作り直すと、前と同じ理由で使われないものが、もう一つできるおそれがあります。時間も費用もかかるので、兼務の場合は、進め切れる範囲を先に見極める必要があります。
2つ目は、今あるものを確かめる前に、新しい施策を始めることです。今ある資産と比べずに始めるので、どちらを優先するかを決めにくくなります。メルマガの読者や、商談で使われていた資料とのつながりも、確かめないまま手放しやすくなります。
どちらも、前提を見ないまま動いている点が共通しています。見るのは、コンテンツより先に、顧客と事業と競合の変化です。
立て直しは3つの手順で進める

- コンテンツを評価する前に、5つの領域(顧客・事業・競合・コンテンツ・導線)の変化を確認する
- 今ある資産を「残す・直す・捨てる・足す」に仕分ける
- 次の90日で先にやる3つを決める。4つ目以降は、次の90日に回す
ここからは、架空の例で追います。
- B社(架空):製造業向けの設備保全SaaSを提供する、従業員60名の会社。営業は5名。マーケ専任だった前任者は8月末に退職
- 佐藤さん(架空):9月にマーケ担当として着任。ほかの業務と兼務で、マーケの経験は1年。使える時間は週6時間
- 引き継いだもの:共有フォルダとメモ1枚。中身は、ホワイトペーパー3本、記事40本、事例2本、サービス資料、ウェビナー録画1本、展示会チラシ
最初の1週は「自分で見る」
佐藤さんの30日は、次のように進めます。
| 週 | やること | 確認先 | 手順との対応 |
|---|---|---|---|
| 1週目 | 資産を一覧にし、何が読まれ、ダウンロードされ、使われているかを数字で見る(判定はしない) | GA4・配信ツール・フォーム・CRM | 手順1の準備 |
| 2週目 | 関係者に使い方を聞き、顧客・事業・競合の変化を確かめる | 営業・社長や事業責任者 | 手順1 |
| 3週目 | 資産を仕分ける | 数字と使われ方。迷うものだけ関係者に | 手順2 |
| 4週目 | 次の90日で先にやる3つを決める | 上長 | 手順3 |
要点は、人に聞く前に自分で見ることです。1週目は棚卸しで、良し悪しの判定はしません。資産ごとに、同じ期間の閲覧数、ダウンロード数、メルマガなどでの配信、営業での利用を並べ、分からない項目は「不明」のまま残せば十分です。こうしておくと、2週目に関係者へ「この資料は商談で使っていますか」「このホワイトペーパーはメルマガで配っていますか」と具体的に聞けます。
B社はMAを入れておらず、数字を見られるのはGA4と配信ツールとフォームまででした。それで構いません。この段階で要るのは分析ではなく、何がどれだけ使われているかの見当です。
事業責任者の方が決めておくと進みやすいことが3つあります。一覧にする資産の範囲、担当者がこの作業に使える時間、そして4週目に出てくる90日の3つを承認するかどうかです。
手順1:5つの領域を「前任者のとき」と「今」で並べる
領域ごとに、前任者のときと今を並べ、変わったかどうかを書きます。B社の記入例です。
| 領域 | 前任者のとき | 今 | 変わった? | 確認先 |
|---|---|---|---|---|
| 顧客(受注したい相手) | 工場の保全担当者(現場) | 保全担当に加え、工場長・DX推進部門にもアプローチ | △ | 営業部長・事業責任者 |
| 事業(サービス名・価格・プラン) | 旧サービス名・2プラン | 新サービス名・上位プラン追加(2024年) | ○ | 社長・料金表 |
| 競合(比較される点) | 主要2社 | 3社(C社が新規参入) | ○ | 競合サイト・営業 |
| コンテンツ(何があるか) | WP3・記事40・事例2・サービス資料・録画1・チラシ | 同じ(2024年以降、更新なし) | - | 共有フォルダ |
| 導線(集客→営業→受注支援) | 記事→WPダウンロード→営業に渡す | 同じ。MAは未導入のまま | - | 配信ツール・フォームのデータ |
B社では、事業と競合が変わっていました。顧客は一部変わっていて、現場向けに作った資料だけでは足りないかもしれません。
「変わった?」が○や△の領域に関わるコンテンツは、古い可能性が高いと私は考えます。仕分けは、ここから疑うと速くなります。
引き継ぎが薄いと、「前任者のとき」の欄が埋まらないことがあります。そのときは「不明」と書き、確認先と、次に誰に何を聞くかを残してください。分からない欄があることも、この段階で分かっておきたいことの一つです。
競合は、機能表より「買い手が判断する材料」で見る

競合分析というと、機能の比較表を作りたくなります。先に見るのは、買い手が判断するための材料を、競合がどこまで出しているかです。列は4つです。
- 価格・プランの説明
- 比較表
- 導入事例
- 導入手順・サポート
B社には比較表がなく、競合3社はいずれも持っていました。
ただし、競合にあるから自社にも要る、とは限りません。競合にあって自社にないものは、不足を疑うきっかけです。足すかどうかは、自社の買い手が比較を必要としているかを確かめてから決めます。B社なら、営業に「比較を聞かれる商談があるか」を聞き、問い合わせフォームに比較を求める声が来ていないかを見ます。必要だと分かれば、手順2の「足す」の候補になります。
この作業を一人でやるのは重い、という点は後で扱います。
手順2:残す・直す・捨てる・足すに仕分ける
判定の基準は4つです。
- 残す:今の顧客の課題に合い、事実も最新
- 直す:テーマは合うが、事実や名称が古い
- 捨てる:今の事業や顧客に合わない。公開停止にとどめ、削除はしない
- 足す:買い手の判断に必要なのに、無い
判定は、先に「顧客の課題に合うか」「事実が最新か」で行います。よく使われてきたかどうかは、そのあとの補助材料です。使われていても事実が古ければ直す対象ですし、使われていなくても顧客の課題に合うものはあります。
B社の代表的な行です。
| 資産 | 作成年 | 顧客課題に合う | 事実は最新 | 使われ方(マーケ施策/営業) | 判定 | 理由 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| WP①(旧プラン解説) | 2023 | × | × | × | 捨てる | 今の事業・プランと合わない。公開停止 |
| WP②(保全コスト) | 2024 | ○ | × | △ | 直す | テーマは合う。サービス名・価格を直して再公開 |
| WP③(点検チェックリスト) | 2024 | ○ | ○ | × | 確認中 | 課題に合い事実も最新なのに、使われていない。理由を関係者に1つ聞いてから決める |
| 事例②(部品メーカー) | 2024 | ○ | ○ | ○ | 残す | 商談用の1枚に再編集して使う |
| サービス資料 | 2024 | ○ | × | ○ | 直す | 新プラン・価格が未反映 |
| 競合C社との比較資料 | - | ○ | - | - | 足す | 競合3社にある。買い手が比較を求めているかを確かめたうえで足す |
○=合う・使われている/△=一部/×=合わない・使われていない/-=該当なし
B社の10件の内訳は、残す2、直す3、捨てる3、足す1、確認中(判定保留)1でした。この表の列見出しは、そのまま自社の表に使えます。
この表の空欄版と、B社の全10件を載せた記入例は、ウェビナーの特典シートに入っています(ウェビナーの申込後、メールでお届けします)。
迷ったら「直す」にしない
迷うものは、たいてい出てきます。そのとき「迷ったら直す」にすると、直すものだらけになり、手順3で先にやるものを決められなくなります。
迷ったら、まず自分で確かめられること、つまり数字と、マーケ施策と営業でどう使われているかを見ます。それでも決まらないものだけ、関係者に1つ聞きます。B社のWP③がこれに当たります。
「捨てる」は削除ではありません。公開を止めるだけなので、あとで必要になれば戻せます。
手順3:次の90日で、先にやる3つを決める
選ぶときの基準は、営業で使うかどうかではありません。手順1と手順2で見えた不足から選びます。不足がマーケ施策の側にあれば、記事の更新やホワイトペーパーの再配信が先になることもあります。B社の場合は、不足が商談で使う資料の側にあったので、次の3つになりました。
| やること | 分類 | 90日後に分かること |
|---|---|---|
| ① WP②のサービス名・価格を直して再公開 | 直す | 配信の反応(開封・ダウンロード)と、商談で使われたか |
| ② 事例②を商談用の1枚に再編集 | 残す→活用 | 商談で試した件数と反応 |
| ③ 競合C社との比較資料を新しく作る | 足す | 比較を聞かれた商談で使えたか |
商談で使われたかどうかは、マーケ担当一人では見えません。営業に聞いて、表に残しておきます。
3つにしたのは、週6時間の兼務で回る量だからです。4つ目以降は、やらないと決めたのではなく、次の90日に回します。
それぞれ、「90日後に分かること」を先に書いておきます。90日後に、続けるか、直すか、次に何をするかを決める材料にするためです。この90日では、成果の有無に加えて、次の判断に使える材料が残る状態を目指します。
もう一つ、3つとは別に、ダウンロードした人のうち何件が商談になったかの数え方を決めて、記録を始めます。これは4つ目の施策ではなく、90日後に判断するための前提です。数字がまとまって見えるのは、次の90日になります。
AIに任せること、任せないこと
この30日で、AIに任せられる部分があります。
- 任せる:一覧化、要約、検出。記事40本の一覧化や要約、旧サービス名や年号が残っているページの一括検出は、AIが速い部分です
- 任せない:顧客・事業・競合が変わったかどうかの判断と、関係者への確認
AIが出してきた事実は、原典で確認してから使います。出典のない数字は採用しません。
一人で止まったら:難所は3つ、頼むなら「何が出てくるか」で見る
ここまでの手順は、一人でも回せるように組みました。それでも重い部分が3つ残ると私は見ています。顧客の検討プロセスの整理、競合との比較、そして優先順位の判断です。
先ほどのナイルの調査では、課題を解決するために必要なものとして最も多く挙がったのが「専門家のアドバイス、知見」(56.8%)でした。これはBtoBとBtoCの担当者を合わせた結果で、ここで挙げた3つの難所を直接示す数字ではありません。
私の考えは、決めるのは社内、決めるための筋道づくりは外部と組んでもよい、というものです。何を残し、何を優先するかを最後に決めるのは、事業を知っている社内の人です。検討プロセスの整理や競合との比較、優先順位の案づくりは、外部と組んでも、決める立場を手放さずにすみます。
外部に頼む場合は、先ほどのPLAN-Bの調査が参考になります。外注先への不満として最も多かったのは「提案された戦略や施策が現場で実行できる内容ではなかった」(26.0%)、次いで「事業・サービス理解が不足していた」(24.5%)でした。頼む前に、次の3つを確認します。
- 自社の顧客と事業を理解しようとしているか
- 何をしてくれるのか、アウトプットが具体的か
- 提案が、現場で実行できる内容まで落ちているか
誰に頼むかより、何が出てくるかで見ます。
明日、確認する3つ
- 今あるコンテンツを、一覧にできているか
- マーケ施策と営業で、どれが使われ、どれが使われていないか分かるか
- 次の90日で何を優先するか、決まっているか
2つ以上が「いいえ」なら、作り足す前に、整理するタイミングだと私は考えます。
最後に、一つだけ決める
3つ全部に答えられなくても構いません。まず、この一文を埋めてください。
一覧にする資産の範囲を、______にする。
ホワイトペーパーと事例だけ、直近2年分だけ、のように狭くて構いません。範囲が決まれば、1週目の作業が始められます。
ウェビナーで、表を順に見る
この記事の表は、代表的な行に絞っています。ウェビナー(約12分)では、B社の30日を、埋まった表を順にお見せしながら解説しています。
お申し込みいただくと、視聴URLと一緒に、特典の「コンテンツ立て直しシート」(Excel)をメールでお届けします。30日の進め方、5つの領域チェック、競合チェック、コンテンツ仕分け、90日の3つの5枚で、B社の記入例を載せた版と、空欄の版の2つがあります。
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この記事の手順を、検討プロセスの整理、既存と競合のコンテンツの整理、不足の一覧、優先順位、90日の制作計画まで含めて2〜3週間で一緒に行うサービスとして、プロレクトには「受注導線コンテンツ設計」があります。